こい


私と付き合ったからといって若村君が通っている塾を休んだり掃除をサボったりすることはなかったけれど、塾までの時間や休みの日に教室や図書館で勉強を教えてくれる。

それでも自分の宿題や勉強はしっかりやってくるのだから、本当に私とは時間の密度が違う。


それで、梅雨明け宣言はいつされたのだろうか?
「前からずっと夏でしたよ」と言うかのように、シレッと毎日暑い。

〈夏休み〉は名目だけで、終業式の翌日からほぼ毎日講習を受けている。
だから講習が終わったあとの教室で、いつも若村君からこうして勉強を教わっていた。

「はあ~、なんでこんなに違うんだろう?若村君、私に構っていなければもっともっといい大学目指せるんじゃない?」

「教えながら勉強してるよ。藤嶋さんと会う時間を削ったからってそんなに伸びないと思う。むしろ息が詰まって効率悪くなるよ」

私といることで若村君は息抜きになっているということなんだよね。
付き合ったからといってベタベタするわけじゃないからあまり実感はない。

「受験のために勉強はしないといけないけど、終わったらほとんど必要ない知識ばっかりでしょう。意味ないなーって時々虚しくならない?」

「うーん・・・ならないかな」

「あはは!若村君ならそう言うと思った」

英語だって話せるようになるわけじゃないし、数学や生物もほとんど使わない。
古文なんて知らなくたって絶対困らない。
ただひたすら受験のためだけの勉強に毎日毎日必死なんて、私は時々ふっと虚しくなる。

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