こい
そんな私の態度を、若村君はわかっていたのだ。
2学期最後の金曜日「志望校を元に戻す」と彼は言った。
「受験科目に変更はないけどレベルは上がるから、ちょっと無理しないといけないんだ」
「若村君なら大丈夫だよ」
「クリスマスもお正月も、何もできなくてごめんね」
「ううん。むしろこれまで時間を作ってくれてありがとう」
私はホッとしていた。
若村君が志望校を戻したことにも、彼の時間を奪わなくてよくなることにも。
ホッとしたことが伝わらないようにマフラーを引き上げて顔を隠す。
結局、若村君に全部言わせてしまった。
お互いにあまり上達しなかったキス。
その日はいつもよりずっとずっと長かった。
唇が離れてもしばらく見つめ合ったまま動かない。
きっとこれが最後になる。
私が若村君から手を離そうとすると、それを拒むようにもう一度強く引き寄せられた。
ぶつかるように再びキスをした若村君は、
「また、学校で」
と言い残して走り去った。
もう誰の姿もないただの道路を、私はしばらく見ていた。