こい


よく晴れた空を見ると紗英さんを思い出して悲しくなるように、雨の日には恵君を思い出すのだろう。

出会ってから別れるまで一年。
たくさんの雨の日とたった一度のデートと、ごく普通の毎日。

春之を好きな私の中にも、恵君はずっと残る「本物」だ。




私の合格が決まった数日後、恵君も無事合格したと人づてに聞いた。


「意味のないものなんかない」と彼は言った。
「いい意味とは限らないけど」と付け足して。

だけど私との恋を彼はきっと「いい意味」にしてくれる。
そういう人だ。

彼は今、どこかで素敵な大人になっているだろう。











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