こい
ご挨拶を再開して、ようやく春之のところにたどり着いた。
「本日はどうもありがとうございます」
ビールの瓶しか持っていなかったけど、春之はどうやら日本酒を飲んでいたようだ。
「あ、ごめん。日本酒持ってくる」
急いで向きを変えた私の腕を春之が掴んだ。
「ビールで大丈夫」
手が熱くて驚いた。
見ると顔が真っ赤になっている。
春之はあまりお酒が強くない。
本家で私と一緒にリビングを抜け出していたのも、そういう理由もあった。
だからこんなに酔った姿を見るのは初めてだった。
「春之、大丈夫?」
「うん」
こんな時本人の申告なんてあてにならない。
「ちょっとちょっと春之!飲めないくせに何やってるのよ。外の空気でも吸ってきたら?」
隣に座っていた春之のお母さんが深いため息をつきながら言った。
「・・・そうする」
春之は重そうに脚を引きずりながらも一応自分で会場の外へと向かう。
「私、お水もらってきます」
一番近くにいたホテルの人からお水を受け取り、私は急いで春之の後を追った。