こい
フロアの端にあるソファーに、春之はぐったりと座っていた。
そこは大きな窓に面していて、駅につながる町並みがよく見える。
「春之、お水飲んで」
隣に座ってコップを押しつけると、春之は素直に半分くらい飲んだ。
「あいちゃん、ごめんね。俺は大丈夫だから戻っていいよ」
私はその言葉を無視した。
春之を置いていけるわけがない。
私にとって春之以外はどうでもいいくらいなんだから。
「春之が酔っ払うなんて珍しいね。どうしたの?」
「うん。ちょっと・・・・・・ヤケ酒」
「ヤケ酒?」
聞き返してみても答えるつもりはない、というように黙ったまま。
仕方なく座り直して正面を向くと、見晴らしはいいのに春の埃でにごった空が見える。
大きな窓ガラスを通して入ってくる光さえ、埃っぽく感じてしまう。
場所は違っても、また同じように二人抜け出して窓の外を見ている。
何年経っても、私と春之はいつまでも同じ関係だ。
このまま何もしなければ、きっと生涯変わらない。
永遠に同じ日々をなぞるだけ。