こい

「春之は?付き合ってる人がいるの?」

「いないよ」

「だったら私じゃダメ?私のことは妹にしか見えない?」

「あいちゃんのことを妹だなんて思ったことない。あいちゃんは・・・あいちゃんだから」

「だったら私と付き合って!」

春之は驚いたままだ。
やっと私が本気なんだって伝わった。
同時に喜んでいないこともわかる。
だから続く春之の言葉は心の中で予想していたものだった。

「・・・そんなこと、考えたことない」

予想できていたのに、目が取れたのかと思うほど大きな涙がボタッと落ちた。
一度道ができてしまったらもう止まらなくて、頬をするすると涙が流れ続ける。

全身から生気が逃げ出したみたいだ。
このソファーに倒れ込んで、二度と起きあがりたくない。
誰もいないところでゆっくり泣いて、もう春之には会いたくない。

そう思いながら春之の上から降り、濡れた脚のまま会場に戻った。

こんな時ですら心のまま逃げ出すこともできない、いつもどこか冷静な自分が嫌になる。




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