こい
それは私の想像していた砂時計ではなかった。
枠のないガラスだけ。
それもねじれた厚い摺りガラスでできていて、そのやわらかな白色の中を影のような青い砂がサラサラと落ちていく。
時間を計るためのものなのに、時間なんて忘れてしまう。
「ありがとう。・・・すごく、すごく綺麗」
「よかった」
私があげた、珍しくもない黒のマフラーを首に巻いたまま、春之は大好きな笑顔を見せてくれた。
自分で欲しがったくせに本当は興味なかった砂時計。
春之がくれるものは、いつも私の想像を超える。
イチゴ飴も春之自身も。
3分眺めて、ひっくり返して、また3分。
そんな私に目を細めながら、春之はからあげを食べる。
ピザやケーキは買ったものだけど、からあげは私が唯一作ったものだ。
クリスマスを恋人と過ごすなら、レストランなんかに行く人も多いだろうけど、私たちは春之の家にいる。
私がそう望んだから。
私がそうしたいと言えば、春之が反対することはほとんどない。
だからきっと「ホテルで豪華ディナーが食べたい」と言えば、そうしてくれたんだと思う。
でも、春之は嫌かなって思ったんだ。
子どもっぽい私だと春之は恥ずかしいかなって。
紗英さんみたいに大人だったら、もっと色んなことをしてあげられたし、どこにでも行けたのに。