俺様作家に振り回されてます!
俺様作家に振り回されてます!

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「マキちゃん、一条先生から呼び出し」

編集長に言われて、私は「えーっ」と不満の声を上げた。

「仕方ないでしょ。『行き詰った。マキが来ないと書けない』って、また一条先生がわがまま言うんだから」

私はため息をつき、校正途中の原稿を閉じた。今日くらいは早く帰って、ネイルサロンにでも行って自分にプチご褒美をあげようと思ってたのに。

「大至急、行って! 直帰でいいから」
「わかってますっ」

私はバッグとコートを取り上げ、エレベーターで地下一階の駐車場に下りた。愛車の軽に乗り、荷物を後部座席に放り込む。

一条冬馬。売れっ子ミステリ作家の彼は超わがままだ。洗練された文章にスピーディな展開。ただ彼の作品に魅せられた私は、彼の魅力をより多くの人に知ってもらいたいと、わが社の女性ファッション誌への連載をお願いした。誠心誠意、礼儀正しく熱意をもって。

けれど、私より三歳年下の彼は『忙しいから無理』とつれない返事。

まあ、その容姿からテレビに雑誌に引っ張りだこだし、忙しいのは百も承知。でも、私だって諦められない。取り付く島もない彼の元に何度も通い、強引に説得して……ようやく連載にこぎつけた。ただし、『俺のわがままに付き合うこと』という条件付きで。
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