俺様作家に振り回されてます!
怪訝そうにする私の前で、先生はシャンパンのコルク栓を開けた。二つのグラスに注いで、一つを私に差し出す。私が受け取ると、先生は自分のグラスを私のグラスに軽く当てた。

「ハッピーバースデー」
「え?」
「今日はマキの誕生日だろ」

先生が言ってシャンパンを一口飲んだ。

「なんで先生みたいな人が、私みたいな一編集者の誕生日を覚えてくれてるんですか……?」
「いいかげん気づけよ、バカ。俺はマキがいないと書けないっつったろ」
「え!? それってまさか」
「そのまさかだ。俺は本気でおまえを落としにかかってんの」

先生の手に顎をつままれた。

「好きだ。俺に惚れるまで帰さない」
「とっくに惚れてます。先生の作品にも先生にも……」

直後、唇にキスが落とされた。先生のキスはほんのり甘くてシャンパンの香りがする。

「間違いなく桜は島倉に落ちますよ」

ついつぶやくと、手の中からグラスを取り上げられた。先生はそれをローテーブルに置き、私をふわりと抱き上げる。

「相変わらず仕事熱心だな。今から俺以外のことはすべて忘れさせてやる」

再び唇を塞がれ、私の頭の中はすぐに先生でいっぱいになった。
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