俺様作家に振り回されてます!

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渋滞には引っかからず、二十五分で到着した。先生は海岸沿いのリゾート地の小さな一戸建てに住んでいる。先生ならもっと大きな家だって買えそうだ。なにしろ大学生の時に書いた作品で大きな賞を取って以来、飛ぶ鳥を落とす勢いなのだから。

「先生、マキです」

いつも言われている通り、勝手にドアを開けた。驚いたことに、今日は書斎ではなく玄関に先生の姿があった。しかも、チェスターコートを着て。今から出かけようとしてる?

「先生、作品は?」
「マキが来る音が聞こえたから」
「そうじゃなくて、作品は……って」

 いきなり先生が私の左肘を取って歩き出した。

「実地調査。探偵はツンデレ女刑事を落としたいんだよ。その落とし方がイマイチわからないから付き合って」

そういうことですか。それなら了解です。

先生が連載中の作品は、探偵・島倉による謎解きだけじゃなく、恋に不器用な女刑事・桜との駆け引きにもドキドキハラハラさせられる。

そっか、ついに島倉は桜を落としにかかるのか!

ワクワクしてきて、先生に促されるまま彼の車に乗った。
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