俺様作家に振り回されてます!
店員さんは私の全身をさっと見てから、いくつかドレスを持ってきた。

「あちらへどうぞ」

フィッティングルームの前へ促された時、先生が店に入ってきた。

「どんな感じ?」
「今、選んでもらったところです」
「ふぅん」

先生は店員さんが手にした数着のドレスを見て、一着選び出した。

「これがいいな。シックな黒がマキに似合いそうだ。着てみて」

言われた通り、フィッティングルームで着替えた。胸元が大きく開いていて、開きすぎじゃないか、と思う。

「マキ?」

外から声をかけられ、おずおずドアを開けた。私を見て先生が目を細める。

「よく似合ってる。あとはこれに合うアクセサリーとバッグを」

さすがは店員さん、パールを使ったネックレスとバッグを抜かりなく用意していた。

「いいな。じゃ、これ、部屋につけといて」

ということは先生はここに泊まるつもりなのか。私はタクシーで帰るしかないな。

それはそうと、値札がついてないからわからなかったんだけど。

「すごく高そうなんですけど、いいんですか? あとで返品します?」
「返品なんかするか。マキにやるよ」
「ええっ」
「……のためなら惜しくない」
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