俺様作家に振り回されてます!
ん? よく聞こえなかったけど、いい作品を書くためなら惜しくないってこと?

「次はあっち」

もうすっかり先生のペースだ。先生に振り回されるのは嬉しい……じゃなくて、これは仕事のため! 原稿を頂戴するため! 

そう自分で自分に言い聞かせているうちに、ヘアサロンに連れて行かれた。

応対した女性スタイリストに先生が言う。

「このドレスに合うようスタイリングとメイクを頼む」
「かしこまりました」

スタイリストは私を椅子に案内した。

「メガネ、取りますね」

メガネを取られ、引っつめたロングヘアを解かれ、あとはスタイリストにお任せだ。

「いかがでしょうか」

スタイリストがケープを取りながら言い、後ろで待っていた先生が低い声でつぶやく。

「キレイだ」
「ど、どうも……」

メガネがないと見えないので、メガネをかけ、鏡を見て息を呑んだ。マロンブラウンの髪は鎖骨の辺りで大きく緩やかにカールし、強調された目元と艶やかに塗られた唇と相まって、驚くほど大人っぽい女性が映っている。

これが、私……。こんな変身をさせてもらっただけでも、自分でネイルサロンに行く以上のご褒美だ。
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