同期の彼と私のカンケイ
やっぱり私は本命ではないのだと、思い知らされてしまった。

「紗雪はバカか。俺はそんな鬼畜じゃねえよ」

首筋にキスが落とされて首をすくめると、くるんと体の向きを変えられて彼と向かい合う形になった。

熱のこもった瞳に見つめられて、愛されていると勘違いしそうになる。

そんな表情するなんて、逸樹、あなたはずるいよ……。

いたたまれなくなり目を逸らそうとすると顎に指が添えられて、触れるだけのキスをされた。

「もう出るぞ」

「……うん」


ホテルから外に出れば、冷たい夜風に襲われて身震いする。

あのまま温かい部屋で彼の腕に包まれて眠ることができたらどんなに幸せだろうと思う。

けれど、今まで泊まったことは一度もない。

体を重ねた後は電車に乗ってそれぞれの自宅に帰る。いつもそう。

「じゃあ、また」

「うん、おやすみなさい」

逆方向の彼とは駅で別れ、私はアパートに帰る。

冷えた自分の部屋が、彼と私の関係を示しているようで切なさが増した。


彼、沢渡逸樹とは同期入社。

背が高くてクールなルックスは入社式でも目を引く存在だった。

偶然隣の席になって、お互い自己紹介をして出身地などの話をしたのが出会いだ。

今思えば、あのとき一目惚れをしていたのかもしれない。
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