明け方の眠り姫
正直、こんなところまで追いかけてきて夏希さんが喜んでくれるとは限らない。
先にあんな不義理なことをしたのは僕の方だし、迷惑がられる可能性の方が高い気がする。
半ば勢いで来てしまった感は否めないが、今来なければもう二度と捕まえられない気がしたし、これで動けなければ僕は一生、動けない人間のような気がした。
「暫く店休む。ごめん」
出発前、両親に許しを得る為、畳に正座をしてそう言った僕を見て、仲良く茶をすすっていた両親はきょとんとした。
「え、何、なんかあったの」
「好きな人を、捕まえにいく」
「はい? 要、彼女なんかいたんだ。どこまで?」
「まだ彼女じゃないけどしにいくの、フランスまで」
「……はっ? えっ、フランス? いつ?」
「今から準備出来次第。帰りはちょっとわかんない」
「…………」
母親も、余り物事に動じない父親も
この時ばかりはぽかんと口を開けたままだった。
迎えに行くという場所が場所だし、こんな風に僕が何もかも既に決定事項のように話しをすることが、初めてだったからかもしれない。
「店のことは、また兄貴ともちゃんと話し合うよ。
でも今は、兎に角行かせてほしい。
彼女がフランスで仕事をすることになるのなら、僕も手伝いたい」
土下座する僕の頭上で暫く沈黙が続いてから、ずず、とお茶をすする音がした。
「…………まあ、とりあえず。まずはその彼女を、捕まえてこい」
「そうねえ、まずはそれが出来てからよねえ」
甘いのか手厳しいのかよくわからない言い方ではあったが
母親はともかく、父親があっさりと了承したことに僕は驚いた。
「だから、ずっと言ってるでしょ。したいことがあるならそうしなさいって」
「したいこと、っていうか……」
「彼女についていきたいんでしょ? 要は確かに自分が先導するよりも、誰かをサポートする方が向いてる気がするわ」
こうもあっさり了承されるとは思わなかったからかなり拍子抜けだったが。
「暁か要が継いでくれたらそれが一番だけど、それが全てじゃない。お前達二人とも、頭が固すぎるんだよ」
先日の大喧嘩のことを聞いたのだろう。
父親のその言葉に、ストンと肩の力が抜けた気がした。
先にあんな不義理なことをしたのは僕の方だし、迷惑がられる可能性の方が高い気がする。
半ば勢いで来てしまった感は否めないが、今来なければもう二度と捕まえられない気がしたし、これで動けなければ僕は一生、動けない人間のような気がした。
「暫く店休む。ごめん」
出発前、両親に許しを得る為、畳に正座をしてそう言った僕を見て、仲良く茶をすすっていた両親はきょとんとした。
「え、何、なんかあったの」
「好きな人を、捕まえにいく」
「はい? 要、彼女なんかいたんだ。どこまで?」
「まだ彼女じゃないけどしにいくの、フランスまで」
「……はっ? えっ、フランス? いつ?」
「今から準備出来次第。帰りはちょっとわかんない」
「…………」
母親も、余り物事に動じない父親も
この時ばかりはぽかんと口を開けたままだった。
迎えに行くという場所が場所だし、こんな風に僕が何もかも既に決定事項のように話しをすることが、初めてだったからかもしれない。
「店のことは、また兄貴ともちゃんと話し合うよ。
でも今は、兎に角行かせてほしい。
彼女がフランスで仕事をすることになるのなら、僕も手伝いたい」
土下座する僕の頭上で暫く沈黙が続いてから、ずず、とお茶をすする音がした。
「…………まあ、とりあえず。まずはその彼女を、捕まえてこい」
「そうねえ、まずはそれが出来てからよねえ」
甘いのか手厳しいのかよくわからない言い方ではあったが
母親はともかく、父親があっさりと了承したことに僕は驚いた。
「だから、ずっと言ってるでしょ。したいことがあるならそうしなさいって」
「したいこと、っていうか……」
「彼女についていきたいんでしょ? 要は確かに自分が先導するよりも、誰かをサポートする方が向いてる気がするわ」
こうもあっさり了承されるとは思わなかったからかなり拍子抜けだったが。
「暁か要が継いでくれたらそれが一番だけど、それが全てじゃない。お前達二人とも、頭が固すぎるんだよ」
先日の大喧嘩のことを聞いたのだろう。
父親のその言葉に、ストンと肩の力が抜けた気がした。