明け方の眠り姫

僕はきっと、夏希さんから見たら頼りない子供みたいなものだろう。


兄貴からすれば、自分の意思も持たない情けない弟だっただろう。


両親から見れば、まだまだ成長過程の息子……だと思ってくれていたら嬉しい。


自分の将来も自分で決めることもできず、流れのままに乗ってきたから何一つ執着することなんてできなかったけれど。


こんな僕でも
かっこいいと憧れた貴女の、役に立ちたい。


強かったり弱かったり
しっかりしているようで、泣き虫だったり


アンバランスな貴女の、安定剤でも構わない。
睡眠薬でもいい。


初めて他の誰をも説得して、傍にいたいと思った。


その為なら、今もまだ貴女が眠れないままだといいとさえ思ってしまう。
僕がいないと、眠れないと。


今も目の下に、隈でも作っていればいいんだ。


エアメールの住所の通りにたどり着いたアパルトマンがある石畳の通りには、向かい側に公園があり土の部分には白く雪が覆っていた。


雪の中を歩き過ぎて、靴の中が濡れて足が痛いくらいにかじかんでいる。
おまけに手袋も持っていなかった僕は、白く息を吹きかけ乍ら左右交互に目を走らせた。



「…………あ!」



漸く、探し求めた人の姿を見つけた時は
本当に本当に、もう何年も会っていなかったような、そんな懐かしささえ覚えてしまった。



「夏希さん!」



まだ此方に気付かない彼女の名前を呼びながら、雪の中を駆け出した。
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