明け方の眠り姫
ことん、とコーヒーが目の前に置かれて、僕は仏頂面のままスツールに腰掛けた。
でも、まあ確かに。
追いかけて行ったからこそ、夏希さんと気持ちを通じさせることができたのだから……感謝すべきではあるのだろうと思う。
だからといって、一杯食わされたという思いは拭えないが。
夏希さんのことを思い出し、無意識に顔が綻んでいたのだろう。
綾ちゃんが銀のトレイを抱えながら、期待を込めた、きらきらした目で僕の顔を覗き込んで来た。
「それで……その、上手くいったんですか?」
「何が?」
「何がって……だから。恋人同士になられたんですか?」
聞いておきながら、なぜか綾ちゃんの方が照れくさそうな顔をする。
聞くのは気恥ずかしいけれど、気になって仕方ないらしい。