雨友
時刻は午後4時半。

ビビットブルーの腕時計に目をやって、知らない住宅地を歩き出す。

複雑な道を迷いそうになりながら歩くけど、別に迷って帰らなくなっても、そのまま凍え死んでもべつに構わなかった。

「ふぅ……」

歩き疲れた頃、忘れ去られたようにある小さな公園が目に入った。

屋根のあるベンチもあるし休めそうだと公園内に入った。

傘を閉じてベンチに腰を下ろした。

ザァザァ…と勢いを増していく雨。
溜まっていく水たまりを跳ねる小さなカエル。

「死にたいなぁ……」

ふと、口がそう動いた。
無意識だったと思う。
勝手に、押し殺した感情をあまりにもあっけなく吐き出すように。

「死んで、楽になりたいなぁ……」

「だめだよ」

心地が良く、爽やかな声が耳に入る。

「え、」

「だめ、死んだりなんかしちゃ」

「あんた……誰?」
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