雨友

雨が降り注ぐ繁華街。

バイトして買ったビビットブルーの腕時計が示す時間は午後４時半。

冬も近づいている１０月下旬。

当たりはもう薄暗い。

「ふぅ……」

息を吐いて回れ右をして住宅地の方へ歩いていく。

こっちの方はあまり来たことがなく、更に道が複雑なので道に迷いそうだった。

けど、迷って帰れなくなって、寒さのあまり凍え死んでもべつに構わなかった。

歩き疲れた頃、住宅地の片隅に忘れ去られたようにある小さな公園が目に入った。

屋根付きのベンチもあるので、そこに腰を下ろそうと公園に入った。

〝東町第三公園〟と書かれた木の看板を意味もなく眺めてベンチに腰を下ろした。

「…………死にたい」

何故か雨を眺め、水たまりを飛び跳ねるカエルを見ているとそう思った。

「…………死んじゃいたい。
死んで、楽になりたい」

「だめだよ」

後ろからふと、柔らかい爽やかな声が耳に刺さった。

「え、」

振り返ると、見たことない中学校の校章が入った学ランを着た男の子が私を見て立っていた。

「……あんた、誰？」

「俺が誰かなんてどうだっていいでしょ。お姉さん、なんで死にたいって言うの？」

まだ声変わりの最中なのか、高音と低音がごちゃ混ぜになった声で私に問うた。

「……関係ないでしょ」

「……そうかもね」

その男の子は私の隣に座って小さく笑った。

「ごめんね、首突っ込んだりしてさ」

「別に……いいけど」

男の子の顔をよく見ると、かなり整った顔立ちをしている。

イケメンモデルの……なんだっけ？
クラスの女子が騒いでたケントだかケンタだかの顔立ちにそっくりだ。