ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…

残像の行方…

恋人達、家族、会社に行き来する人々が交わる大きな十字の交差点の曲がり角。

ある人を待ちわびながら里桜は微笑みを浮かべ立っていた。


そして…


目の前で二台のバイクが出合い頭に事故を起こしたのだ。

耳を突いたブレーキ音に、悲鳴と叫び。

まさか、と一瞬の寒気が私の足を動かした。



うそ…



「 綾己っ！？やだ、 綾己っ！！」



そして、私は赤黒い血にまみれながら泣き崩れ、綾己の手を強く握っていた。



「 …里… 桜……… 」



ねぇ 嘘でしょ…

こんな……



「 君！大丈夫かっ、救急車呼んだから… 出血がひどいっ、こっちへ！！」



ダメよ、お願いよっ…



「 違うっ、私じゃないっ！！
やだぁ 綾己ぃ…っ いや… いやあぁっ！！ 」



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誰にも過去があり、時には闇に囚われる悲しみがある。

苦しくて痛い、深い悲しみは枯れない涙を何度も流し続ける。




過去を今も夢に見る…


あれは…

遠い記憶ではない、当時の私は高２の終わり春休み、１８歳になったばかりだった。

過去を振り返る私の名は…



奥瀬 里桜、現在２３歳。



人は大切な者を失った日からの月日は流れない。

流れるのは体にある血のみ…

でも、私の血は……

とても冷たい。



そして私は今、ある扉の前に立っている。


私の思いを… 今……