ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…

憂臣のキスを驚くまま受けて、溜まった涙がこぼれた。



綾己… 私は、ずっと あなただけ…




「 里桜… 」




もう一度、優しく触れる憂臣の唇が私に重なる。

見えない手を拳に変えて私は目を閉じた。


この時私は憂臣の気持ちを最高の形で裏切る事を決心をした。


それまで、決して私から離れることは許さない。

私の綾己と私の流した涙の分だけ裏切ってやる。

だから、今から憂臣の恋人としてもうひとつの心を作った。




「 好きだ、里桜… 」

「 憂臣… 離さないでね 」

「 ああ、離さないよ 」




私にとってはすべてが偽り、憂臣にとっては真実。

私と憂臣の恋は見えないところで交わらずスレ違う。




綾己…



必ず、憂臣に膝をつかせてみせる。

そして、背をむけるから。


絶対に…




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