ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…

おさまらない心音が気持ち悪かった。

月命日にお墓参りと交差点に密かに立っていた私。

花束が備えられているのは、綾己の母親がしているものだと思っていた。


でもまさか、憂臣だったなんて思いもしなかった。


鳴り止んだ携帯は すぐにまた鳴り出した。

息を整えながら携帯画面を見つめ、電話に出た。




「 はい… 」

『 里桜、今 どこ? 』

「 デパートに行こうと思って外にいる 」

『 なんだ、俺近くにいるし、待ち合わせよ 』

「 わかった、先にデパート行ってて 」




淡々と会うことを了承した私は 気持ちを抑えてデパートへと向かった。

デパート正面玄関口で憂臣が待っていた。




「 里桜!」

「 お待たせ 」




憂臣はあの事故を忘れてなかったと気づいた私は 憂臣をつい見てしまう。




あの花は、綾己のために?


ずっと供えてたのは憂臣なの?


聞きたいと思うも 私は決して口には出さない。

いくら綾己のために花を供えても、綾己は戻らない。


私の悲しみはあの日から増すばかり…






< 34 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop