ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
おさまらない心音が気持ち悪かった。
月命日にお墓参りと交差点に密かに立っていた私。
花束が備えられているのは、綾己の母親がしているものだと思っていた。
でもまさか、憂臣だったなんて思いもしなかった。
鳴り止んだ携帯は すぐにまた鳴り出した。
息を整えながら携帯画面を見つめ、電話に出た。
「 はい… 」
『 里桜、今 どこ? 』
「 デパートに行こうと思って外にいる 」
『 なんだ、俺近くにいるし、待ち合わせよ 』
「 わかった、先にデパート行ってて 」
淡々と会うことを了承した私は 気持ちを抑えてデパートへと向かった。
デパート正面玄関口で憂臣が待っていた。
「 里桜!」
「 お待たせ 」
憂臣はあの事故を忘れてなかったと気づいた私は 憂臣をつい見てしまう。
あの花は、綾己のために?
ずっと供えてたのは憂臣なの?
聞きたいと思うも 私は決して口には出さない。
いくら綾己のために花を供えても、綾己は戻らない。
私の悲しみはあの日から増すばかり…