ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
誰にも伝えることのない綾己を失った悲しみは、憂臣を裏切ることで報われると私の決心は今も変わらない。
そして、憂臣は何も知らない。
知らなくていい。
私が憂臣に背を向ける日がくるまでは…
デパート内で憂臣は私の手を腕に添えてあるショップの前を横切ろうとして足を止めた。
「 どうしたの?」
「 ん、キレイだなぁと思ってさ。あれを里桜が着たらさ、キレイだよ 」
あれを着たら…?
憂臣の視線の先を見ると 純白のウェディングドレスがあった。
そこはジュエリーショップと隣接してあるドレスショップだった。
「 キレイだね、ドレス 」
こんなキレイなドレス、綾己の隣で着たかった…
「 里桜… 俺のために、ウェディングドレス着てくれないか?」
「 え… もしかしてプロポーズ? 」
いきなりショップのウェディングドレスを前にして、私は憂臣にプロポーズされた。
あまりに唐突なプロポーズに言葉が出ず 憂臣を見つめていた。
「 里桜、俺の隣にずっといてほしい… 返事は?」
「 あ… 」
そんな、だって本気で言ってる?
互いに大人になった私たち。
いつの間にか憂臣の心には私だけがいた。
それも私の本当の心を知らずに…