ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
私は幸せにはなれない。
綾己を奪った憂臣に愛され、裏切った今も憂臣に愛されてる。
それを素直に受け入れるなんて出来ない。
どうして憂臣は私を?
「 ごめんなさい、私は綾己を忘れられないの… 」
どうしてなの?
「 ずっと、里桜を見てきたからわかってるよ…
それでも、俺が里桜を思ってるから幸せにしたい。
里桜、俺のためにウェディングドレスを着てほしい…
倖村さんにも笑顔を見せてあげてほしいんだ。
俺がそばにいる、ずっと… 倖村さんに誓うよ 」
プロポーズしてくれた時の言葉をまた言ってくれるんだ…
あの頃の気づかなかった あたたかな気持ち。
変わらない憂臣。
涙が流れて、憂臣が拭ってくれる。
そして、私が投げ捨てたダイヤの指輪を私の指に…
この指輪!?
「 憂臣… 私は… 」
「 ゆっくり行こうよ、里桜。俺に里桜の一生を… 倖村さんに一生かけて償うよ 」
「 憂臣… 」
綾己… 私は 憂臣を許していいの?
私は幸せになっていいの?
そんなこと許されるの?
綾己…
「 里桜、俺と一緒に生きてくれ 」
憂臣が私を抱きしめ言った。
「 憂臣っ… 」
私はもう、ブラックドレスを着ることはない。
弥生がそばで言葉なく嬉し泣きをしている。
私は今すぐとはいかなくても、憂臣に愛されてきた時間と、今もこれからも愛されていく時間を 憂臣の腕の中で受け入れることにした。
綾己…
なんでかな、涙があったかいよ…