嘘と本音*クリスマスに綴る物語



同じ職場で働く二人が互いの存在を意識するようになったのは、三年前のこと。

美和子のプロジェクトチームに圭吾が加わったことで、二人の距離は徐々に縮まっていった。


優しく穏やかな性格の圭吾に惹かれるのに、そう時間はかからなかった。

けれどこの時美和子は三十二歳、圭吾は二十六歳。

つまり、これ以上二人の関係が親密になることはないと美和子は確信していた。


圭吾に好意を抱いていることは隠し、あくまで気の合う同僚として振る舞っていた美和子。


だが一年前のクリスマス、このホテルのレストランに誘ってくれた圭吾の口から『付き合ってほしい』と告げられたことで、二人の関係は変わっていった。


最初は罰ゲームかなにかかと思い笑って誤魔化した美和子だが、冗談などではなく真剣に好きだと言ってくれた圭吾。

これはいよいよ真実なのだと気付いた美和子は、若干の不安を残しながらもその告白にOKを出す。


忙しい二人だったけれど、なんとか時間を作ってはデートをしたり、恋人としての日々を普通に過ごしてきた。

そんな美和子の気持に変化が現れたのは、三十五歳の誕生日を迎えた今年の十月。



圭吾が予約してくれたレストランで食事をしていた時、仕事に対する彼の熱意を聞いた瞬間に、モヤモヤした黒い陰が心の中に広がるのを美和子は感じた。


あと二ヶ月で、付き合って一年になる二人。

美和子は徐々に、結婚を意識していた。


けれど『もっともっと努力して、お客様に良い物を届けられるように仕事を頑張りたい』、そう言って目を輝かせた圭吾。

勿論、結婚はまだしないだとか、結婚をする気はないなどと言われたわけではない。


でも三十五歳になった美和子と六歳年下の圭吾とでは、結婚に対する温度差がありすぎる。そう美和子は感じたのだ。




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