嘘と本音*クリスマスに綴る物語
彼がこの小説を読むことは有り得ないし、私が作家の由利亜だということも多分知らない。
ただ自分に言い聞かせる為だけに書いた小説。
こんなことをしなければ大好きな彼に別れを告げられないなんて、なにが年上の大人の女だ。聞いて呆れる。
記念日でもあるクリスマスにわざわざ別れることを選んだのは、彼に私と過ごした日々を少しでも覚えていてほしいからなのに。
けれど結婚が見えないことが怖くて不安だということ、まだ若い彼にはきっと分からないだろう。
幻想的に浮かぶ夜景に目を奪われていると、部屋のインターフォンが鳴った。
美和子と同じ結末を迎える為に、私はゆっくりとドアを開く。
「遅くなってごめん」
小説の中の彼と同じ言葉を放った健吾に、私は思わずクスッと微笑む。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
部屋に入った健吾がジャケットを脱ぎ、私はそれを受け取ってハンガーに掛けた。
「あれ?お酒飲んでないんだ」
「あっ、うん……」
「もしかして待っていてくれた?さっきルームサービスでシャンパンを頼んだから、飲もうね」
優しくて穏やかな笑顔を向けられたら、お酒は飲まないと決めていた気持ちがいとも簡単に変わってしまう。
ただ自分に言い聞かせる為だけに書いた小説。
こんなことをしなければ大好きな彼に別れを告げられないなんて、なにが年上の大人の女だ。聞いて呆れる。
記念日でもあるクリスマスにわざわざ別れることを選んだのは、彼に私と過ごした日々を少しでも覚えていてほしいからなのに。
けれど結婚が見えないことが怖くて不安だということ、まだ若い彼にはきっと分からないだろう。
幻想的に浮かぶ夜景に目を奪われていると、部屋のインターフォンが鳴った。
美和子と同じ結末を迎える為に、私はゆっくりとドアを開く。
「遅くなってごめん」
小説の中の彼と同じ言葉を放った健吾に、私は思わずクスッと微笑む。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
部屋に入った健吾がジャケットを脱ぎ、私はそれを受け取ってハンガーに掛けた。
「あれ?お酒飲んでないんだ」
「あっ、うん……」
「もしかして待っていてくれた?さっきルームサービスでシャンパンを頼んだから、飲もうね」
優しくて穏やかな笑顔を向けられたら、お酒は飲まないと決めていた気持ちがいとも簡単に変わってしまう。