嘘と本音*クリスマスに綴る物語
彼の言葉通りすぐにシャンパンが運ばれてきて、私達は夜景の前で乾杯をした。


見つめ合えば、優しい素直な人柄がその大きな瞳から伝わってくる。


彼に別れを告げた美和子も今の私も、本当は心の中で泣いているのに。


本当は別れたくなんかない。ずっと、健吾と一緒にいたい。

あなたの隣にいる未来を想像するだけで、私は幸せだった。


私があなたの歳に近ければ、こんな風に嘘を付く必要などなかったのかもしれない。


大好きな人に好きだと言われたこと、一緒に同じ時を過ごし、愛し合えたことを一生の宝物にしよう。




「ごめんね、健吾。あなたの隣にいる未来は、想像できない」


突然の言葉に少しも動揺せず、健吾はまっすぐ私を見つめている。



「私なんかに時間を……」

「ねぇ、美和」


私の言葉を遮り、健吾は私の持っていたグラスを奪ってテーブルに置いた。



「俺はさ、美和との未来を簡単に想像できる」


「……?」


「年上の美和と付き合っていてプレッシャーを感じたことは一度もないし、寧ろ素直じゃない美和の本心を読むのは得意なんだ」


「えっ……?」


彼はワイシャツのポケットから取り出した物を、何も言わずに私の指にはめた。




「結末、書き換えた方がいいと思うよ」


「健吾?」



「ノンフィクションにしたいのなら、だけどね。……由利亜さん」












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