ネガティブ女子とヘタレ男子
光の無い瞳が、真っ直ぐ私を映す。
固く止められた腕を何度か動かして、彼を見据えた。
「っ…千秋ちゃんは、着せかえ人形なんかならない!」
「へえ、どうして?」
「私が…私が美コンに出る。私が出て、代わりに着せかえ人形になってあげるよ。」
「チィちゃんがソレに賛成するとは思えないけどなぁ。」
「当日まで、千秋ちゃんには内緒にしてて。衣装とか、私のサイズでつくってもらえば千秋ちゃんは絶対着れないでしょ。」
「安直(あんちょく)な考えだね。でも気に入った。それならてんちゃんにもチィちゃんにも怒られなくて済むし、俺も面白いと思うよ。」
静かにクックッと笑って、私から離れて行く横場くん。嬉しそうな表情には、いつの間にか光が指していた。
ーーーなんて、子供みたいな人なんだろう。
大好きなオモチャを取られて怒り、親に怒られ無いからと喜ぶ子供。
頬を緩めた彼から、さっきまでの雰囲気は一切感じられなかった。
「あ、そうだ。君の想像で一つだけ間違ってる事を教えてあげるよ。」
机にかけていた鞄を取り、彼に背を向けて歩き出す。
「俺、チィちゃんより君が好きだよ。」
(嘘つき。)
望んだ答えが出たからか、声はしっかり私に届けながらも、彼が無理矢理ひき止めることはしなかった。
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