ネガティブ女子とヘタレ男子
四人中二人が終わって、残るのは俺と爽ちゃんの二人だけ。
爽ちゃんの様子を伺いつつ、俺は次に名乗り上げようと口を開いた。
「次、俺がいっていい?」
「ま、待って。次は私に行かせてくれないかな。」
思いもよらなかった爽ちゃんからの申し出に、俺は身を引く。真面目に席から立ち上がって自己紹介を始める姿は、彼女らしさを感じさせる。
爽ちゃんは深呼吸を数回した後、ゆっくりと話しだした。
「…1のA、風深爽(ふうかさや)。千秋ちゃんと出会ったのは入学してすぐ、同じクラスになってからです。えっと…あ、蒼野くんとはこの前柊くんと話した時に挨拶しました。柊くんとは…この前廊下でぶつかってしまって、謝った時に話しました。…以上、です。」
(え…。)
爽ちゃんの口から出たのは、半分本当で半分嘘だった。
(……そんなに俺が嫌いなのか。)
出された料理に手をつけながら、皆は和気あいあいと談笑(だんしょう)を繰り広げる中、俺はただ呆然と動かなくなった頭を整理することしかできなかった。
ーー好きな子からの、遠回しな拒絶。
(理由は分かんないけど、俺との事を二人に知られたく無いから、多分言わなかったんだ。)
どんなに考えても、一度は合った瞳がそれ以降俺を写すことは無かったのは事実で…。勝手にドキドキして、勝手に落ち込んで。考えれば考えるほど、何故だか空しくなって泣きたくなってきた。
(女々しいなあ、俺。)
「じゃあ次は、」
「悪い、用事思い出したから帰るわ。」
心臓が貫かれたように穴を空けてポッカリと痛む。
それは穴を埋めようと内側へ締め付けていき、次第にズキズキと悲鳴をあげた。
苦笑を浮かべて千秋ちゃんへお詫びとご飯の礼を済ませ、早々と席を立った。
突然の俺の変わりように、三人は言葉を詰まらせていた。
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