ネガティブ女子とヘタレ男子

そっと、熱くなった目頭に柔らかいものが触れる。その正体は、考えなくても横場くんの唇だった。目頭にたまった涙の粒を、彼がキスで拭ってくれる。涙がおさまれば、次は目尻に、頬に…たくさんキスの雨を降らせてくれた。

「ねえ、風深さん。俺が側にいるから。君を一人にしないから。その弱さを俺に分けてくれないかな。チィちゃんの笑顔を取り戻すために、俺にできる事はこれしかないんだ。」

「そこまで好きなら、千秋ちゃんに正直に告白すれば良いじゃない。その方が、千秋ちゃんの側で支えられると思うよ。」

チュっと、触れるだけのキス。

唇に触れたソレは、ドラマとかでみる甘酸っぱいものではなかった。

「俺は、チィちゃんと幸せになりたい訳じゃない。チィちゃんとてんちゃんが二人で幸せになる姿を見たいんだ。それには、俺の恋心(弱さ)も邪魔にしかならないんだよ。」

「……弱い人って、何でこう間違えちゃうのかな。」

「人の選択に強さも弱さも関係ない。ただ、人が選択する事に意味がある。それだけさ。」

横場くんの首に腕を回す。
首を持ちあげれば、頭の後ろに彼の手が回った。

ゆっくりと近くなるお互いの顔。

二度目に重なった唇は、涙のようにしょっぱかった。



.
< 39 / 95 >

この作品をシェア

pagetop