ネガティブ女子とヘタレ男子
そっと、熱くなった目頭に柔らかいものが触れる。その正体は、考えなくても横場くんの唇だった。目頭にたまった涙の粒を、彼がキスで拭ってくれる。涙がおさまれば、次は目尻に、頬に…たくさんキスの雨を降らせてくれた。
「ねえ、風深さん。俺が側にいるから。君を一人にしないから。その弱さを俺に分けてくれないかな。チィちゃんの笑顔を取り戻すために、俺にできる事はこれしかないんだ。」
「そこまで好きなら、千秋ちゃんに正直に告白すれば良いじゃない。その方が、千秋ちゃんの側で支えられると思うよ。」
チュっと、触れるだけのキス。
唇に触れたソレは、ドラマとかでみる甘酸っぱいものではなかった。
「俺は、チィちゃんと幸せになりたい訳じゃない。チィちゃんとてんちゃんが二人で幸せになる姿を見たいんだ。それには、俺の恋心(弱さ)も邪魔にしかならないんだよ。」
「……弱い人って、何でこう間違えちゃうのかな。」
「人の選択に強さも弱さも関係ない。ただ、人が選択する事に意味がある。それだけさ。」
横場くんの首に腕を回す。
首を持ちあげれば、頭の後ろに彼の手が回った。
ゆっくりと近くなるお互いの顔。
二度目に重なった唇は、涙のようにしょっぱかった。
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