ネガティブ女子とヘタレ男子
それぞれの成長
三人の和解
ーーー時刻は9時ジャスト。
蒼野隊長と柊隊員は自分のクラスから離れ、目的の場所へと向かっていた。
「数メートル先に目標確認。ターゲットの周りは数人のSP(エスピー)による護衛の壁が厚いもよう。隊長、作戦を。」
「あ、悪いんだけどさ八雲さん呼んで貰っても良いかな。」
「心の準備!」
「朝っぱらから茶番を始めたやつが何言ってんだよ。少ない読者様が読むもの間違えた気になって帰ったらどーすんだ。」
「メタ発言禁止ー!」
早朝。文化祭の準備があるからと眠たい目を擦りながら登校した天は、俺がうるさく起こしたからか機嫌が悪かった。
「だいたい、9時登校で良いのに7時に起こされるこっちの身にもなれよ。」
「早めにお越しとかねえとお前絶対サボるだろ。優しい親友に感謝しろよな、本当に。」
「ドウモッシター。」
「心を込めろ!」
三日間ある文化祭の準備を夏休みの大半を使って行うからか、約一週間ぶりにみたクラスメイトの顔はあまり懐かしい物ではなかった。
クラスから離れ、俺がコントを繰り広げている内に隣のクラスに顔を出した天は、近くを通った女の子に千秋ちゃんの呼び出しを頼んでいた。
キャーっと黄色い声を上げ、直ぐ様天から離れた女の子が駆け寄ったのは千秋ちゃんとは別の女の子。その子が友達だったのか、二人で赤い顔をしながら天を見つめてはキャーキャーと楽しそうに叫んでいた。
「いつ呼んでくれるんだろうな。」
「はあ…もういいや。」
「は?」
彼女達の行動にため息を溢(こぼ)しながら、諦めた天はドカドカと教室へ進んでいく。隣にいた筈(はず)の存在を千秋ちゃんの取り巻きの側で確認すれば、慌てて後を追う。
その時、廊下側の席に座る爽ちゃんと、そのすぐ側に立つ男が笑いあっているのが目に入った。
「チィ。」
取り巻きの外から千秋ちゃんを呼ぶ天。天の突然の訪問に驚いた千秋ちゃんは、「どうしたの?」と立ち上がり駆け寄る。
「ちょっと三人で話そ。」
『三人で。』の言葉にビクっと肩を震わせた千秋ちゃんは、隣に並び立つ俺を見て苦笑を浮かべた。
「…ぁ、後でも…、」
「ダメ。今話そう、"千秋"。」
「う、うん。分かったよ、"天"。」
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