ネガティブ女子とヘタレ男子

時間にすると数分。それでも暮人が居なくなってからチィが頬を膨らませている時間はそれ以上に長かったような気がする。

「チィ…何でここにいんの。」

「…。」

「暮人と話せたのか。」

「…。」

ずっと黙り続けるチィが、何を怒っているのか分からない。チィを男二人で囲みながら、デカイ図体が二つオロオロとまん中で膨れている女の子の周りをウロチョロと歩き回った。

「…何か言ってくんないと分かんないんだけど。」

ようやく口を開いたチィは、俺の知らない間に大人になっていた。

「天が…大樹が…私をのけ者にした…。」

真面目に話すとき以外呼ばれない呼び方。しかも、一人称は昔のもの。大樹もソレに気づいたのか、二人で目を丸くして後に続く言葉を待った。

「……私、二人と一緒がいいよ。」

「俺も二人と一緒が良い。ずっと。離ればなれになっても、それでも三人でいたいよ。」

「…馬鹿だな、お前ら。そんなの、俺もに決まってんじゃん。」

小さな手が、俺の手を包む。

俯くチィから視線を外し、隣の大樹を見やれば大樹も同じように手を繋がれていた。

子供のような高い体温。ヒックと小さな声が、震える手の理由を教えてくれた。

「っ、でも…大樹は、馬鹿。ばかばかっ…私の事、考えてくれるなら…さやたん傷つけちゃヤダ。天も、一人で抱え込んじゃヤダぁ…。」

うわーんと泣き叫ぶチィから、流れた大粒の涙は両手が塞がっている本人では、拭うことも出来ず重力に従ってポタポタと落ちていく。そんな涙を、大樹と二人で空いた方の袖でグイっと少し乱暴に拭いてやった。

「イタイ。」と文句が来たが、顔を上げたチィの笑顔は太陽のように眩しくて、大樹はまた「やっぱり綺麗だ。」と柔らかく微笑んでいた。



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