ネガティブ女子とヘタレ男子
文化祭初日

暮人のドタバタ美コン出場者発表会


あっという間に一ヶ月が過ぎ、文化祭はやってきた。三日間もある文化祭に、あまり乗り気では無い男が二人、一人は白雪姫の衣装を着て、一人は王子の格好をして椅子にドカリと座っていた。

「ないわぁ…マジ無いわぁ…。」

「何これ、聞いてないんだけど…何で俺白雪姫の格好してんの?美コンって男女で出場でしょ?天はいいとして、何で俺なの?俺男なんだけど?」

童話の白雪姫をモチーフに、二人の衣装は作り込まれていた。サイズなんて計っていないのに何故かピッタリで、逆に怖くなってしまうほど完成度は高いそれは二人によく似合う。

ウィッグに毒リンゴと称した小物を手に持ち、くるぶしの少し上まである長いスカートをヒラヒラと揺らせば、隣で王子の格好をした天がゲラゲラと笑った。

「俺さぁ、王子やるなら白タイツだと思って期待してたんだけど。何で普通の白ズボンなわけ?聞いてないんだけどー。」

「普通の人が嫌がる物を着たがるとか…天はほんと凄いな。なんなら俺の服と代わってやろうか。」

「遠慮(えんりょ)しまーす。」

「このやろ。」

眼鏡をはずし、ウィッグを被るからと纏められた前髪。顔が出るわ、視界がクリアだわ、頭のウィッグは重いわ。開始数十分で既に帰りたい俺は、今から行われる生徒向けの催しに出場しなきゃいけない事も相まって椅子から動けないでいた。

「二人は文句が多いねー。」

「ゲッ。」

「よっ、大樹。何してんの…ってお前の格好もやべえな。」

二人後ろに立ち、椅子と椅子に体を乗り出して顔を見せたのは隣のクラスの横場。天達が仲直りした後、何故か横場は俺になついてきた。

「くーちゃん。」と呼び、用もないのに顔を見せては少し話して去っていく。

変なやつだな。なんて天と話した事もあったが、「アイツは人懐っこいからな。」と嬉しそうに語られてしまったのでソレからは何もいっていない。

「横場はなんの格好なの。」

「えっと…なんだっけ。あ、冥土の土産。」

「え、ハデス的なやつってこと?」

「嘘だよ、くーちゃんは馬鹿だなぁ。」

「馬鹿だなぁ。」

「猟師さん、コイツらを狩ってください。」

前を行くおもちゃの猟銃をぶら下げた猟師の格好をしたクラスメイトに話題をふる。突然話しかけられたから話の内容はつかめていなかったやうだが、ソイツのノリが良すぎて「白雪姫がおっしゃるなら。」なんてもっともらしいことを言ってかしずいた。

キャッキャ騒ぐ俺達のクラスはコスプレ屋で、生徒や明日から来る一般参加の人達に衣装を貸して楽しんでもらうと言うことをしていた。

もちろん、女子がメイクや髪形まで行っている。

それゆえに完成度は結構のもので、初日に訪れる生徒の数は多いように思えた。

暇な男子は衣装を身に纏い練り歩いて宣伝をする係。女子に代わろうかと聞けば、「男子はそれでいいの。」と言われてしまうので、男どもは取り合えずクラスの貢献になるよう校舎中を歩き回っていた。

「で、結局なんなの。ソレ。」

「俺のクラスは執事メイド喫茶だから、俺はご主人様なんだー。」

「え、喫茶関係なくね。」

「相手の女子は何着んの?」

「爽は確かマーメイドドレスじゃなかったかな。クラスの皆を俺達が雇ってる設定なんだって女子が騒いでた。」

「ふうん。」と興味のない返事が漏れる。それも本当に数秒の間で、話題に出てきた爽ちゃんの名前に大声で驚いた。

(あんな人がたくさん居るところに、爽ちゃんが自分から行くなんて。)

「え、ちょっと待って。何で爽ちゃん?爽ちゃん美コンに出るの?」

「出るよー。」

「前に美コン出場者名簿お前も貰っただろ。そこに名前書いてたじゃん、1-A風深爽って。」

「み、見てない…。」

「くーちゃんは馬鹿だねえ。」

「馬鹿だねえ。」



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