ネガティブ女子とヘタレ男子

がやがやと騒がしい人混みを抜けて、彼女が待つ空き教室へ。生徒がいる棟から渡り廊下を過ぎれば、誰もいない職員室が扉を開けっ放しで放置されていた。職員室から廊下へゆっくりと進む。

髪をいつもの様にワックスで固めて、深く深呼吸をした。取っ手に手をかければ、緊張からか耳元で心音が鳴り響く。

ガラガラと重い音を立てて開く扉。下げていた顔をゆっくりと上げれば、窓際に白いウェディングドレスを着た爽ちゃんが立っていた。

真上に登った太陽が少しずつ傾き初めて教室の窓から暑い日差しを送り込む。

窓の外をぼうっと眺めていた爽ちゃんは、ゆっくりと俺を見て優しく微笑んだ。

怖がっていない爽ちゃんの素の笑顔。
それはとても輝いて見えた。

「暮くん、タキシードなんだね。」

「ぅ、うん…。爽ちゃんはウェディングドレスなんだね。」

「私のはね、本当はマーメイドドレスだったんだけど…教室に戻ったら千秋ちゃん達のファンクラブの人がいて。これを着てください。って渡されたの。その時、一緒に挟まってた手紙…あれ、暮くんからだったんだね。」

「手紙…?」

「暮くんじゃないの?職員室の近くの空き教室へ来られたし。って果たし状みたいな手紙貰ったんだけど…。」

「は、果たし状って…俺、もう爽ちゃんにそんな事しないよ。」

「ふふ、じゃあ…三人の誰かにいたずらされちゃったかな。」

「はは、アイツらならやりそうだわ。」 

爽ちゃんの姿に見とれていると、微笑んだまま爽ちゃんが話しかけてくれた。

ゆっくりと話す爽ちゃんは、いつもとは違う薄い化粧でピンク色の頬はキラキラと光っていた。



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