ネガティブ女子とヘタレ男子
「どこに行ったんだろ…。」
校舎を三人で回ってみても千秋ちゃん達は見当たらなかった。馴れないヒールにそろそろ足も限界で、いったんクラスに戻って出直そうと暮くんが言ってくれた。
「お、風深さんお帰り。」
「あ、蒼野くん。」
暮くんとわかれて自分のクラスへ戻れば、王子様の格好をした蒼野くんがクラスのメイドさん達に囲まれて持て囃されていた。
机に置かれた店で出すケーキ全種類と、紅茶が一杯。蒼野くんと向かいの席に千秋ちゃんの姿は無かったが、聞いても蒼野くんは真面目に答えてくれないだろうから帰ってくるのを待つことにした。
「ケーキ食う?うまいんだけどさ、さすがにこんなに食えなくて。手伝ってくんねえかな。」
「無理に食べなくても良かったのに。」
「貰っちゃったからさ、返せねえなあと思って。」
「てんちゃんは相変わらず皆に優しいなあ。」
「大樹も食え。」
三人で椅子を持ち寄ってケーキをつつけば、生徒用の机を二つくっつけてレースをかけた簡易的な机を埋め尽くしていたケーキ達はどんどんお腹の中へ収まっていった。
他愛も無い話をしながら、三人でお茶会。待てども千秋ちゃんは帰って来なかったが、代わりに暮くんが迎えに来てくれたので、私達二人は先に席を立つことになった。
大樹は蒼野くんと一緒にいると、ついて来なかった。
タスキをかけ直し腕を組んで練り歩く。
お仕事だけど、好きな人と二人で入れる時間は幸せだなと思った。
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