【完】朝食は、遅めにランチで。
朝食は、遅めにランチで。

「え?登れないって?」


スカイツリーの真下にある広場のベンチで、スマートフォンの白い光に照らされたノブ君の表情は相変わらず能面みたいで……ちょっとは動揺するかなと思っていたのに。


ノブ君は特に私の発言を気にするわけでもなく、「東京ってどこでもWi-Fi飛んでていいよねえ」と、暢気にインターネットを楽しんでいた。


そんなマイペースで行動が読めないノブ君に惚れたんだからしょうがない。

いつもならそう思えるけれど、2年ぶりにまともに来れた旅行で私が落ち込んでいたら、一緒に悲しんでくれてもいいんじゃない?



「ねえ、ノブ君」



「何?」



「せっかくの旅行だよ?2年ぶりだよ?目の前にスカイツリーだよ?明日の午後にはもう帰らなきゃいけないんだよ?もうちょっとさあ……」



ノブ君に不満をぶつけたら、涙がじわあっと目に溜まってきた。



「電車が遅れたのが予想外だったよなあ」



ノブ君は、私が泣いているのも気づかないでずっとスマートフォンをいじっていた。

こんな時いつもなら「バカ!」とか「あほ!」とか一言毒を吐いて自分の部屋にこもることができるのに、ここは東京だ。

知らない土地。

どこにも行くことが出来ない。
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