【完】朝食は、遅めにランチで。
自分たちが住んでいる場所とは違う匂いの空気に、行き場のない悲しさがさらに強くなる。
たった二日間しかないこの時間をたっぷり楽しもうと、雑誌やネットを懸命に調べて、オリジナルの旅のしおりまで作った自分が馬鹿みたいじゃないか。
そんなことを思っていたら、「適当に楽しめばいいじゃん」としおりを作っている私の隣で寝転がりながら漫画本を読んでいたノブ君の姿が思い出されて、今度は悔しさが込み上げてきた。
「よし、これでいいな。って、なんで泣いてるの?」
「気づくの遅いよ!ノブ君のバカっ!」
「まあまあそんなに怒らないの」
ノブ君はスマートフォンを上着のポケットにしまって立ち上がると、私の頭を撫でて、その手で私の手を握った。
「うわっ。さおちゃんの手冷たい」
「……冷え性だからね……」
「それならなおさら、早く行こう。いいところ見つけたから」
ノブ君の手は私の手と正反対であったかくて、久しぶりに握られた手にきゅんとときめいてしまった。