秘密 ~ホテル・ストーリー~
新幹線の窓から見える景色は、雲に覆われていてすっきりしない天気だった。
「ごめんね。起こしてもらっちゃって」未希は、亮平からもらったコーヒーを飲まずにバッグにしまうところだった。
「飲まなかったの?」
「うん、飲む前に寝ちゃった」
「どんだけ寝不足なんだよ、お前」
「ん、でも。よく寝たから頭はすっきりしたよ」
そうか、そりゃあよかったな。
「ねえ、ねえ。東京駅だあ!私、きれいになった駅舎ってまだ見てないんだあ。見たいなあ」
「遊びに来たんじゃないぞ、寄るなら帰りにな」
たった数十分まわり道するだけだし、そのくらいしてやってもよかった。
けれど、嬉しそうにはしゃいでる未希の姿を見ていたら、なぜかイラついて言うことを聞いてやる気になれなかった。