草食系上司の豹変
そうして、社内打ち上げが終わって、本当の業務終了。
部署の先輩方は資材を会社に運ぶため、ひと足先にホテルを後にしていた。
私が会場に最後まで残り、忘れ物チェック。
ホテルの担当者の方へ御礼。
ホテルのスタッフさん達による片付けが始まるなか、ようやく壁際の椅子に座る。
……つ、疲れた……。
体力に自信はあるものの、気を遣ったせいもあり、さすがにぐったり。
「お疲れ様でした」
落ち着いた声と共に横から差し出された、オレンジジュースが入ったグラス。
見ると、結城主任だった。
慌てて立ち上がろうとすると、「いいですよ」と制され、主任も私の隣の椅子に座った。
「ありがとうございます。いただきます」
喉がカラカラだったので、非常に非常にありがたい。
そして、一口。
「美味しいっ!」
思わず声をあげてしまった。
冷たい生搾りオレンジジュースが、とんでもなく美味しい。
さすがプレミアムホテル!
はしたないとは思いつつ、一気飲み。
うう、生き返る……!
「お疲れ様でした。竹内さんが走り回ってくれたおかげで、今年は楽でした。部署のみんなそう言ってます」
軽く頭を下げられる。
こんな風にちゃんと部下を労ってくれると、走り回る甲斐があるな。
「ありがとうございます。少しは力になりたかったので、そう言っていただけてうれしいです。来年はもっと要領よくやります」
「よろしくお願いします。うん、やっぱり僕の見立ては間違っていませんでした」
……はい?
「あなたをうちの部署に引っ張ったのは僕です」
……何と。
「さっきの打ち上げ、ろくに食事も飲み物もとっていなかったでしょう? 今日はこれで解散ですから、食事に行きましょう。お疲れ様会です」