草食系上司の豹変
「竹内さんは身長が大きい方ではないので、大変だったのではないですか?」

あ、音大の話題かわされた。触れられたくないのかな? 距離感がまだつかめないや。

「だからちょこちょこ動くしかなかったんですよね」

私が肩をすくめておどけると、結城さんが笑った。

会社ではあまり見ない表情。
……少しかわいいかも。

「生傷絶えないし、膝を痛めて手術したこともありました」

結城さんは今度は自分が痛そうに顔を歪める。

案外表情豊かなんだ。

「結城さんはバスケされたことあるんですか?」

「ありますよ。体育の授業でやるでしょう?」

「ええっ⁉︎」

「驚きますか?」

「だって、バイオリン弾く人は、突き指しないように球技は見学するものじゃないんですか⁉︎」

結城さんは思いっきり笑った。
まあ、場所が場所だけに、そんなに大きな声ではなかったけれど。
顔がクシャっとなって、意外とかわいくて、ドキっ……って、ん?

「そんな人もいるかもしれませんが、僕は普通の学生でしたよ。あなたの中で、僕はどんなイメージなんでしょうね?」

……セレブでお上品な草食系男性です、とはさすがに言えない。

あ、そうだ。あれ、きいてみよう。
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