私のご主人様
「準備しろ。最後のメインイベントだ」
合図の言葉は唐突で、男は頷くと私に最後に水を飲ませて立ち上がった。
鎖を引かれて立ち上がると、そのまま引かれてどこかに向かう。男はもうナイフを出すことはなかった。
呼びに来た黒スーツの男に導かれるままに、男は進む。やがてたどり着いたのは、円形の床がポツンとある場所。
そんな床には、中心に鎖が繋がれ、鎖の先は枷だった。
「乗れ」
「…」
男に言われるがままに円形の床に足を乗せる。男はかがみこんで、私の手足についた枷を、床に繋がれた枷に付け替えた。
男は私のすぐ背後に立つと、私の体がすっぽり隠れるように巨大な布を被せた。
「大人しくしてろ。俺の指示なしに声を出すことも許さない」
頷いたけど、伝わったかは分からない。
心臓が嫌な音を立てる。ドクドクとまるで耳に心臓があるみたいに、音が頭に響く。
頭上がやけに騒がしい気がする。多くの人の声。怒号にも似た喧騒に身が震えた。