私のご主人様
…軽い。一体何日食ってないのか。この白髪といい、この女壊れてねぇだろうな。
懸念がよぎったが、今はそんなこと考えている場合ではない。
女を横に抱き、男たちに背を向ける。…こいつらの仕業か。悪趣味な。
「若、運びましょーか?」
「いい。それより親父は」
「気にするな」
程近くで聞こえてきた声に顔を向けると、50代の男に車イスを押された親父がいる。
「あれ、田部さん来てたんすか?」
「旦那様がいるところに、田部ありですよ」
「はは、そりゃそーでした」
ケラケラと笑うバカはほっといて、さっさとずらかるか。
「季龍」
親父に呼ばれ、顔を向けると親父が着ていたはずのジャケットを差し出されている。
「彼女にかけてやりなさい」
「親父が…」
「女性に気も配れないような男はモテないぞ」
「…」
ここでいう言葉か。だが、断ることもできず、受け取ったジャケットを女にかける。