私のご主人様
それを満足げに見た親父は、軽く手を上げる。
それを見た車イスを押す男が出口へ車イスを押す。
「帰るぞ」
「はい」
親父を先頭に歩き出す。会場にわずかに残っていた奴らは、その場に残り、道を開ける。
「あれはどこの組のもんだ?」
「あんな大金を詰める組なのか?」
「あのじじいまさか…」
「誰だよ?」
「知らねぇのか!?あの伝説の…」
言葉が飛ぶ。正体不明に俺たちを探るように。親父の姿を見て目を疑う奴がいる。
車イスに乗った背は、年齢を感じさせない威厳に満ち、人の前を行く姿は変わらない。
「あいつら、永塚組だ…」
「じゃあ、あのじじいが伝説の…」
永塚組。
数十年前に突如現れた組。その組を率いた永塚 源之助(ながつか げんのすけ)は、組潰しの異名を持つ男。
もはや伝説と化した組。そんな組の存在を密かに示し、会場を去った。
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