私のご主人様
「…起きたか」
「っ!?…?」
不意に襖が開いて、男の人…青年が入ってくる。
あれ、あの2人のどっちでもない。予想外の人物の登場に頭がついていかない。
それにしても、この人すごくきれい。170以上ある身長に、精悍な顔つき。長めの黒髪が似合ってる。ちょっと怖い気もするけど、たぶんそれは彼が全く笑ってないせいだ。
もしかしてあの2人、どっちかの下についてる人?連れてこいって命令された?
使用人と変わらないのかも。彼も大変な目に遭ってるんだろうか。
1人で悶々と考えていると、イケメンさん(とりあえずそう呼ばせてもらおう)が、眉を潜めてる。
「とりあえず着替えろ。話はそれからだ」
「…?」
着替える?イケメンさんの視線をたどると、枕元にきれいに畳まれた着物。
…着物着るの?今から?
イケメンさんに視線を戻すと、ふいっと視線を逸らされて、廊下に出ていってしまう。
「10分やる。早くしろ」
そんな言葉を最後にピシャリと閉められた襖。
なんで着物なんだろう。そういう趣味とか?あの時代劇みたいに…やめよ。どのみち私に拒否権なんかない。
どっちが主人だとしても、とにかくまた売られないように、クスリを盛られないように従順に動かないといけない。
あの男の人のようにならないために…。