私のご主人様
イケメンさんは私の姿を見て頷くと、何かを差し出してくる。
「髪を縛れ」
「…」
差し出されたのは1本簪。縛るというより、まとめるっていうのが合ってる気がする…。
緑色のトンボ玉が先についたシンプルなデザイン。桜の着物と合うなぁなんて思いながら受け取って、長い髪を簪でまとめた。
それをまじまじと見ていたイケメンさんは、少しだけ口角を上げる。
「うまいもんだな」
「…?」
やれって言ったのに、なんか誉められた。
イケメンさん、いい人かもしれない。
イケメンさんは畳に直に座ると、畳を叩く。座れってことらしい。あれ、連れていかれると思ったのに意外だ。
着物の裾が気になったけど、なんとかその場に正座した。
「今の状況、分かっているか?」
買われたってことでいいのかな…。声を出そうとしたとき、その違和感に不意に気づく。