私のご主人様
なんだろうこれ…。メモ帳の表紙に『はづき ことね』とひらがなで書かれたお名前シールが貼ってあった。
はづき ことね…?
「お前の偽名だ」
「!」
「前の名前は捨てろ。お前は今日から葉月 琴音だ」
偽名…未練を、捨てさせるために?
メモ帳を持つ手に力が入る。
琴葉という名は、私にとって特別なもの。お父さんとお母さんがくれた、大事なもの。
簡単に、捨てろと言って捨てられるものじゃない。
「琴音、いいな」
「…コク」
逆らえない。宮内 琴葉は私の心の奥にしまっておこう。
ここにいる間は、葉月 琴音にならなければいけない。ちょうどいいじゃないか。ここでの私を作るのに、名前があった方がしっくり来るかもしれない。
言い聞かせて、顔を上げる。いつも間にかもう1人ののぶひろさん…?はいなくなってた。