私のご主人様

「!」

あ、お庭出れた。ただ、雑草が腰の高さくらいになってたのは想定外。

うわぁ、除草剤撒いた方が早いんじゃない?試しに手短な草を引っこ抜く。途中で切れた。

抜くにせよ、どっちみち除草剤コースかな。

もう1本抜いてみる。

はぁ、私とんでもないところに来ちゃったのかなぁ。こんな、誰も家事ができないなんて信じられない。

でも、季龍さんが買ってくれなかったら、私今頃もっとひどい目に遭ってたかもしれないんだよね?

こんなのんきに草抜きしてる場合じゃなかったかもしれない。

そう考えたら、私運が良かったのかもしれない。だって、こんな仕立てのいい着物着せてもらって、部屋だって割り与えられて、優しくしてくれて。

きっと、あの売られていた人たちよりずっと恵まれた場所にいる。

感謝しなきゃいけない。そして、恩返しできるように頑張らなきゃ。

…お父さん、心配してるよね。突然いなくなっちゃったんだもん。ケーキ、食べたかったな…。

目頭が熱くなって、鼻をすんっと吸う。

お父さん、私はとりあえず無事です。いつか、お父さんのところに帰りたい…。

目をこすって、顔を上げる。あ、いつの間にか抜いた跡ができてる。まだまだ全然だけど。

ここに手をつけられるのはまだ先かな…。

ひとまず抜いた雑草はその場に置いておいて、中に戻る。
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