私のご主人様

茶髪の男の人の人はまだ抱きついたままだし、これどうすればいいのでしょうか?

呆然としていると、人を掻き分けてきた信洋さんが私を見ると、大きく息をついた。

「ここちゃん驚かせないでよ…」

「?」

「あー、奏多、ここちゃん困ってるから離れる!」

「え?あ!す、すみませんっ」

信洋さんの声に、茶髪の人がやっと離れてくれる。

それにしても、こんなに大騒ぎして何があったんだろう…?

「ここちゃんどこいたの?部屋にいないから、逃げ出したんだと思ったよ」

「!?」

嘘、私を探してたの?それに逃げたらどうなるかわからないのにそんなことしないよっ!

首をブンブン横に振ると、わかったわかったと言ってくれるけど、誤解は解かなきゃ!

タブレットのメモ帳を急いで起動させてポチポチ文字を打つ。必死で打っていると、腕を突然捕まれた。

「!」

「琴音!てめぇ、売り飛ばされてぇのか!!」

季龍さん…?すごく怒った顔に、血の気が引いていくのがわかる。

どうしよう、逃げたって思われるの?違うのに、誤解解かなきゃ…!

口に出そうとしても、声がでない。そうだ、だから、筆談して…。途中かけの弁解の文章はまだできていない。
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