私のご主人様
『…未熟者ですが、ご指導、よろしくお願いいたします。奥様』
『えぇ。もちろんよ。さてと、早速ついてきてね?琴葉』
『はい』
私が断ることでここに来れなくなるのはいい。でも、それでお父さんが不利になるなら、私は奥様の機嫌を損ねるわけにはいかないんだ。
それをきっかけに、私は陣之内家に来て早々奥様の使用人として働くことが決まった。
もちろん、なにもできない私は、奥様付きのメイドさんに毎日怒鳴られながら仕事を覚えた。
正直、学校なんかろくに行けなかったくらいに。
家に帰れない日すら出来てきて、見かねたお父さんが無理をして奥様に掛け合った。
そして…。
『琴葉、転校しなさいね』
『…はい?』
『香蘭学園っていうの。すぐ近くよ』
『で、ですが、香蘭学園はお坊っちゃまの…』
『えぇ。正裕の学校よ。今琴葉が在籍してる中学遠いじゃない。だからそこに通って、すぐこっちに来るの。いいわね?』
『…はい。…奥様ですが、お恥ずかしい限りですがうちに香蘭に通えるだけのお金は…』
『私が出すわ。その代わり、琴葉には学校での正裕の様子を見てほしいの。正裕の使用人はみんな大人だから学校まで面倒見れないから。琴葉に一任するわ』
『…はい。奥様』
この提案は、奥様が少しでも長く私を側におくためにやったのだと、お父さんに聞かされた。
それほど気に入られていることを誇りに思う半分、その重圧が苦しくもあった。