私のご主人様
「彼女、随分歩かれたようですね」
「えぇ。はぐれて焦ったんですよ。ね、琴音ちゃん」
「…!」
違う…お願い気づいて…!!
首を横に振ろうとしても、押さえつけられて動けない。警察の人が気づいてくれることを祈るしかない。
「彼女、声がでないんですか?」
「えぇ。昔から声だけでなくて」
「髪が白いようですが…」
「珍しいでしょ?それをバカにされることも多かったんですけど、俺はきれいだと思うんですけどね」
警察官の目が鋭くなっていく。それに合わせ、奏多さんの手に力が入っていく。
だけど、不意に警察官の目が緩む。
「そうでしたか。見つかって何よりです」
「はい。すみませんでした」
…嘘、でしょ。
警察官は笑顔で見送るつもりなのか、その場で笑っている。
呆然としていると、膝の裏と肩に手を回され、気づいたときには横抱きにされてしまう。