私のご主人様
「ここちゃん。若の機嫌あんま悪くしない方がいいよ。おとなしくおいで」
「琴音ちゃん…」
「…」
…怖い。でも、このままじゃ、もっとまずくなる気がする。
奏多さんの服を離すと、伸洋さんがすぐに手を伸ばしてきて、抱っこされる。
「やってくれたね、ここちゃん。屋敷中大騒ぎになったんだから」
「…」
「ま、若に怒られな」
最後に冷笑を浮かべた伸洋さんは、さっさと歩いて車に近づく。季龍さんの乗ってる後部座席のドアを開けると、何を思ったか投げ入れるように中に放り込まれた。
「!?」
「出せ」
「はいはい」
季龍さんの膝の上に乗せられてしまう。慌てて退こうとしても、季龍さんの腕が回って、動けなくなる。
なんで下ろしてくれないの!?
運転席に乗り込んだ伸洋さんは、なんの迷いもなく車を発進させる。
車が進みはじめても、なにも言わない季龍さんに気まずさが募る。膝の上から退こうとしても、腰に手を回されて動けない。
「琴音」
「っ…」
「昨日言ったはずだ。逃げたら売り飛ばすと」
突然口を開いた季龍さんの声は低い。視線をそらそうとすると、顎を捕まれて視線をそらすことも許されない。